House Takaoka


この住宅の玄関は、日本の伝統的な「土間」を現代的にアレンジした空間構成を取り入れ、「広がり」と「つながり」をテーマに設計しました。玄関土間は単なる機能的な空間にとどまらず、住まい全体をつなぐ中心的な役割を果たしています。
玄関に入ると、まず目を引くのが靴を履いたまま使用できる広々とした土間スペースです。この土間は、住まいの「外」と「内」を緩やかにつなぐ役割を持ち、使い勝手の良さを重視して設計しました。たとえば、荷物の一時置き場や自転車、アウトドア用品の整備スペースとしても活用可能な、汎用性の高い空間です。床材にはカラクリート(コンクリートに色粉や硬質骨材を配合した無機質系の床仕上げ材)を採用し、実用性を確保しつつデザイン性を損なわない仕上がりとしています。
玄関から正面にはガラスの引き戸があり、その先に配置された中庭が自然光と風を取り込む役割を果たしています。この中庭は、視線の抜け感を生み出し、空間全体を広く感じさせるだけでなく、季節の移ろいを住まいの中から楽しむことができます。
また、土間からフローリングへと移行する際に設けた段差は、空間を立体的に分ける重要な要素です。この段差に加え、床材の切り替えにより、土間と居住スペースとの間に「心地よい緩衝地帯」を生み出しました。これにより、空間に奥行きと居心地の良さが生まれ、住まい全体の雰囲気を豊かにしています。
玄関は住まいの「顔」であり、訪れる人に最初の印象を与える重要な場所です。この玄関土間は、住む人々が日常の中で自然と集い、つながりを感じられる空間としてデザインしました。北向きの玄関ながら、天窓を設けることで自然光を効果的に取り入れ、機能性とデザイン性を両立させた空間としました。この工夫により、住まい全体の魅力を一層引き立てています。

リビングダイニングキッチンは、家族のつながりや快適な暮らしを重視しながら、空間の有効活用と素材の調和を追求して設計しました。キッチンはリビングやダイニングと自然に一体感を持たせた半オープン型とし、適切なカウンターの高さにより、手元を隠しつつもコミュニケーションが取りやすいデザインを採用しました。料理をする人と家族が視覚的にもつながることで、暮らしの中心にキッチンがある空間を目指しています。
右側の階段はロフトスペースへとつながる省スペース型のデザインで、段を左右互い違いに配置することで限られた空間を効率的に活用しました。また、階段下部には収納スペースを設け、多目的に使用できる機能性を確保しています。この設計により、空間の使い勝手とデザイン性を両立させました。
天井には露出した木梁を配置し、自然素材の温かみを感じられるデザインとしています。梁は水平ではなく緩やかな屋根勾配を強調する形状とし、空間に広がりとリズム感をもたらす役割を持たせています。フローリングにはナチュラルな木目を採用し、居心地の良い温かみを生む一方、白を基調とした壁や建具とのコントラストで空間全体を洗練された印象に仕上げました。
左手の壁面は収納として設計し、大容量の収納力を確保しました。家族の生活動線を妨げず、見た目にもすっきりとしたデザインを保ちながら、日常生活を支える実用性を重視しています。この空間全体の設計においては、家族の暮らし方を丁寧にヒアリングし、それを形にすることを最優先としました。結果として、機能とデザインのバランスが取れた、居心地の良い空間が完成しました。





この住宅では、中庭を中心に空間が構成され、各エリアが適度な距離感を持つように設計されています。リビングの反対側には個室群が配置されており、中庭を挟むことでプライバシーを確保しながらも、視覚的なつながりと開放感を提供しています。また、玄関の反対側には浴室を配置し、中庭を介して家族それぞれの生活空間が程よく分離されています。この配置により、各エリアが独立しつつも全体が調和した空間となり、家族全員が快適に過ごせる住まいを実現しました。中庭は自然光や風を取り込むだけでなく、空間全体の中心として各エリアを緩やかにつなぐ役割を果たしています。